人事担当者は注意して「定期健康診断は1年以内ごとに1回」以外のルールもある

企業などの事業者は、雇用する労働者に対して健康診断を実施しなければなりません。このルールは労働安全衛生法により、企業に義務化されています。

このことは企業の経営者や人事担当者なら誰でも知っていることだと思います。

また、定期健康診断は年1回実施しなければならないことも周知の事実だと思います。

しかし健康診断には、「企業に義務化されている」「年1回」以外にもルールがあります。

この記事では、経営者や人事担当者が知っておいたほうがよい「健康診断の深いルール」を紹介します。

法律と規則で健康診断のルールを押さえる

企業などの健康診断は、労働安全衛生法と労働安全衛生規則の2つによって規定されています。規則は、法律(法)に書き込めなかった詳細を定めたものなので、この2つは1セットと考えることができます。

法律を苦手にする人は少なくないと思いますが、この法律と規則は内容も論理構造も単純です。

経営者や人事担当者は法律遵守の観点からも、健康診断のルールを、労働安全衛生法と労働安全衛生規則に沿って覚えておいたほうがよいと思います。

労働安全衛生法第66条で義務化されている

健康診断のルールの大元(おおもと)は労働安全衛生法第66条であり、ここには次のように書かれてあります(*1)

■労働安全衛生法第66条第1項

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない

第66条は第5項まであり、上記は第1項のみの抜粋です。

企業などの事業者は労働者に健康診断を行わなければならないと書かれてあります。法律で「~しなければならない」と書かれてある場合、それは義務になります。

「だから」企業は労働者に健康診断を実施しなければならないのです。

*1:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057

「特別な健康診断」と「受けるのも義務」

労働安全衛生法第66条の第2項~第5項も重要なので確認しておきます。

ただ、条文をそのまま転記すると長くなって読みづらいので、要点のみを箇条書で紹介します。

●第2項の要点

事業者は、有害な業務に従事する労働者に対し特別な健康診断を行なわなければならない

●第3項の要点

事業者は、有害な業務に従事する労働者に対し歯科医師による健康診断を行なわなければならない

●第4項の要点

都道府県労働局長は、労働者の健康を保持するため必要があると認めるときは、事業者に対し臨時の健康診断の実施を指示することができる

●第5項の要点

労働者は事業者が行う健康診断を受けなければならない

第2項は有害な業務に従事する労働者には、特別な健康診断を受けさせなければならないとしています。これは第1項の健康診断とは別に実施しなければならない、という意味です。

第3項は歯科健診について言及しています。

第4項は都道府県労働局に関する事項です。

第5項はとても重要で、健康診断は労働者にとっても義務になっています。労働者のなかには「私は健康だから会社の健康診断は受けない」と考える人もいますが、それは義務違反になります。

人事担当者は従業員に、健康診断を受ける義務があることを説明したほうがよいでしょう。

細かいルールは労働安全衛生規則で決められている

労働安全衛生法は健康診断のルールの大枠を決めているだけで、細かいルールはすべて労働安全衛生規則に書かれてあります(*2)。

健康診断にはさまざまな種類があって、ここでは次の6つの健康診断を紹介します。

健康診断の種類根拠
1雇入時の健康診断労働安全衛生規則第43条一般健康診断
2定期健康診断労働安全衛生規則第44条
3特定業務従事者の健康診断労働安全衛生規則第45条
4海外派遣労働者の健康診断労働安全衛生規則第45条の2
5給食従業員の検便労働安全衛生規則第47条
6特殊健康診断などその他の規則など

1~5までは一般健康診断と呼ばれています(*3)。

6の特殊健康診断などは有害な業務に従事する労働者に実施するものです。

*2:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032

*3:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf

雇入時の健康診断について

雇入時(やといいれじ)とは、労働者を雇用するとき、という意味です。労働安全衛生規則第43条は、事業者は労働者を雇い入れするとき、以下の検査を含む健康診断をしなければならない、と定めています。「~しなければならない」とあるのでこれも義務です。

■雇入時の健康診断の検査項目

1既往歴と業務歴の調査
2自覚症状、他覚症状の有無の検査
3身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査
4胸部エックス線検査
5血圧の測定
6血色素量及び赤血球数の検査(貧血検査)
7血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)ガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP)上記3つの検査(肝機能検査)
8低比重リポ蛋たん白コレステロール(LDLコレステロール)高比重リポ蛋たん白コレステロール(HDLコレステロール)血清トリグリセライド上記3つの検査(血中脂質検査)
9血糖検査
10尿中の糖と蛋たん白の有無の検査(尿検査)
11心電図検査

多くの企業は、これらから雇用する労働者に対して、雇入れ時の健康診断を病院やクリニックで受けるよう依頼すると思います。

病院やクリニックも雇入れ時の健康診断の検査項目を知っているとは思いますが、人事担当者は念のため労働者に対して必要な検査項目を知らせて、「この検査を受けるように」と伝えたほうがよいでしょう。

定期健康診断(いわゆる健診)

いわゆる「健診」は、この定期健康診断のことを指します。企業は、すでに雇用している労働者に対し「1年以内ごとに1回」、定期健康診断を実施しなければなりません。

「1年以内ごとに1回」とは最低年1回という意味であり、年複数回実施してもかまいませんが、大抵の企業は年1回実施しています。

定期健康診断の検査項目は、雇入時の健康診断とほとんど同じです。

違いは「4、胸部エックス線検査」だけです。定期健康診断では「4、胸部エックス線検査と喀痰検査」となっています。

特定業務従事者の健康診断

特定業務を行う労働者には特殊な健康診断を実施しなければならず、それを特定業務従事者の健康診断といいます。

特定業務は次のような仕事になります。

■特定業務従事者の健康診断が必要になる特定業務の種類

●多量の高熱物体を取り扱う業務、著しく暑熱な場所における業務

●量の低温物体を取り扱う業務、著しく寒冷な場所における業務

●ラジウム放射線、X線その他の有害放射線にさらされる業務

●土石、獣毛などのじんあい、または粉末を著しく飛散する場所における業務

●異常気圧下における業務

●さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務

●重量物の取扱いなど重激な業務

●ボイラー製造など強烈な騒音を発する場所における業務

●坑内における業務

●深夜業を含む業務

●水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務

●鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気、または粉じんを発散する場所における業務

●病原体によって汚染のおそれが著しい業務

●その他厚生労働大臣が定める業務

特定業務従事者の健康診断は半年に1回実施しなければなりません。つまり最低年2回実施します。

海外派遣労働者の健康診断

海外派遣労働者の健康診断が必要になる海外派遣労働者とは、6カ月以上海外に赴任する人です。

海外派遣労働者には、海外に派遣するときと、帰国して国内業務に就かせるときの2回、健康診断を実施してください。

給食従業員の検便

給食従業員には、健康診断にプラスして検便が必要になります。

給食従業員とは、社員食堂や炊事場で給食の仕事をする労働者のことです。

この検便は、雇用したとき(雇入時)と配置換えをしたときです。

特殊健康診断などについて

「特殊健康診断など」(=一般健康診断以外の健康診断)には次の3つがあります。

いずれも有害な業務に従事する労働者を対象にしていて、雇入時と配置換えのとき、そして6カ月に1回、健康診断を実施しなければなりません。

■特殊健康診断の対象者

●屋内作業場などにおける有機溶剤業務に常時従事する労働者

●鉛業務に常時従事する労働者

●四アルキル鉛等業務に常時従事する労働者

●特定化学物質を製造し、または取り扱う業務に常時従事する労働者と、過去に従事した在籍労働者

●高圧室内業務または潜水業務に常時従事する労働者

●放射線業務に常時従事する労働者で管理区域に立ち入る者

●除染などの業務に常時従事する除染等業務従事者

●石綿の取扱いなどに伴い石綿の粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者と、過去に従事したことのある在籍労働者

■じん肺健康診断の対象者

●常時粉じん作業に従事する労働者と従事したことのある労働者

■歯科医師による健康診断の対象者

●塩酸、硝酸、硫酸、亜硫酸、弗化水素、黄りんその他、歯またはその支持組織に有害な物のガス、蒸気または粉じんを発散する場所における業務に常時従事する労働者

健康診断の費用は会社負担

上記で紹介したすべての健康診断の実施には費用がかかりますが、その費用は全額、企業が負担しなければなりません。

労働者に負担させてはいけません。

厚生労働省は、費用負担も「事業者の健康診断を実施する義務」に含まれていると解釈しています(*4)。

*4:https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/1.html

健康診断を受けさせるだけ、では終わらない

企業による健康診断関連の業務は、労働者に検査を受けさせただけでは終わりません。

健康診断の担当者は、次のことを行ってください(*5)。( )内は根拠法になります。

■検査を受けさせること以外の健康診断関連業務

●受診者(労働者)に健康診断の結果を文書で通知する(労働安全衛生法第66条の6)

●健康診断で異常がみつかった労働者には、3カ月以内に医師または歯科医師の意見を聴かなければならない(労働安全衛生法第66条の4)

●必要がある場合は、その労働者の就業場所を変更したり、作業を変えたり、労働時間を短縮したり、深夜業務の回数を減らしたりしなければならない(労働安全衛生法第66条の5)

●必要に応じて作業環境の管理や作業の管理を見直さなければならない

●一般健康診断の結果は5年間保存しなければならない

●定期健康診断については、労働基準監督署に報告しなければならない

*5:https://jsite.mhlw.go.jp/akita-roudoukyoku/library/akita-roudoukyoku/seido/anzen/jigosochi220119.pdf

まとめ~働く人を守るため、法律を守るため

健康診断は労働者の健康維持・増進に不可欠なものなので、企業がこれを実施することは自社のために働いてくれる人たちを守ることにつながります。

そして健康診断のルールは法律で厳格に定められているので、これの実施は法律を守ることでもあります。企業は法律に則ってビジネスをしなければなりませんが、健康診断の実施もそれに含まれるわけです。

参考にしたサイトのURL

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000032

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347AC0000000057

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000103900.pdf

https://jsite.mhlw.go.jp/akita-roudoukyoku/library/akita-roudoukyoku/seido/anzen/jigosochi220119.pdf

https://jsite.mhlw.go.jp/okinawa-roudoukyoku/var/rev0/0110/7882/2013719142037.pdf

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/faq/1.html

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